秋の読書週間。
なんて大層なものではなく、年に数回無性に活字に触れたくなることがある。
アルジャーノンで重くなった心を癒す本はないかと訊いたところ、勧めてもらったのが西加奈子さんの「円卓」。
著者の本は読んだことがない。
国語の問題で何かの作品には触れたことがあったと思うけど、一冊丸ごと読むのは初めて。
以下感想。
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誰の突っ込みか、ところどころ第三者の目線で挿入される関西弁の軽快な突っ込みと文章がリズムよく読みやすい作品でした。
大きな紅い円卓がある公団住宅に住む大家族の末娘、小学3年生の”こっこ”こと琴子のひと夏の物語。
自分の言動が割と琴子寄りだったので、色々と小学生の頃の恥を思い出して豆腐の角に頭をぶつけたくなりました。
中二病とも違う、級友の家庭の事情や心情など露知らず、自分とは違うことに特別感を見出すあの……。
こっこも”美人”で”ちょっと変わってるけど”、”優しい家族に囲まれている”というだけで特別なんだけど、ドラマチックな自分を望んでいるのが読者目線だと何とも贅沢な話。
クラスの子が年相応な子もいるけれど、早熟で聡明な子が近くにいるのがこっこの救いだったと思う。
私が小学生の時、あんなに賢い子たち周りにいたかな……今思えば周りに興味なさ過ぎて覚えてないけど多分いたんだろうな。
こっこも決して無神経ではなく、言葉を選別する賢しさがある。
ただ出力と表現方法を持ち合わせてなくて、感情がいっぱいいっぱいになるとヒステリックになってしまう。
あるある。
幼馴染の”ぽっさん”と祖父の石太がこっこの良き理解者として、感情を御しきれないこっこのストッパーとして良い味をだしてて好きです。
中でも、パニックから過呼吸になって倒れてしまったクラス委員長の真似をしたと担任から咎められたことにショックを受けたというこっこに、責めるわけでもなく、優しく客観的に諭しているシーンがグッときました。
あそこで感情的に「あれはおまえが悪い」と頭ごなしに注意するような人たちに囲まれて過ごしたら、他人の感情と表情に振り回される人間になってしまったんじゃないかな。
人の気持ちを想像することは大切、でも伺いすぎるのも良くないから。
他人の気持ちに立って想像する、それがまだできない琴子が、不審者に会うことでうまく言葉にできない不快感と孤独を味わうことになる。焦がれていた他者とは違う体験と孤独。
それをぽっさんに打ち明けることで、ぽっさんがその時そばにいてあげられていれば、自分が大人だったらと後悔するシーンも好きです。
泣けないって聞いていたのに思わずうるっとしてしまいました。
ラストシーンも良かったですね。
こっこの成長が確かに感じられる、それでいて情景が瞼に浮かぶ爽やかな終わり方で。
ほかの作品も関西弁で書かれているのだろうか?
また著者の作品で気になるものがあれば読もうと思います。